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百年の孤独
暫く前に書いた創作文章が見つかったのでひっぱりあげてみようかと。
ちなみに続きもの予定、続きの目処は立っておりません。一応設定のようなものはあるのだけど。

読んでみてやろうというお優しい方はクリックして下さいまし。
ファンタジーというか厳密にはSF。


窓下に見える景色は常と同じ灰白色。何時にも増して詰まらない、と月嶋可葉は盛大に大口あけて欠伸をしてから手にした粉引のマグからカフェオレを飲んだ。
桜でも咲けば薄らとでも珊瑚のような桃色が灯る様が幾重に重なる雲の上からでも見えるのに。それとも、それでも届かないのかもしれない。あの暴力的なまでに心をざわつかせる薄緋色ですらも、この雲上には。
それはある意味寂しく、それでいて非常に心落ち着くことのような気が可葉にはした。あの色が降り積むのを見れば本能の部分が震える。喜悦なのか恐怖なのかは知れず。
ふと思い出した春の心はのどけからまし、という昔の詩歌を口ずさみ、長く伸ばした爪でマグを弾けばりん、と小さく涼やかな音がしてほんの僅か微笑む。
身の周りに集めたお気に入りのこうしたものが心安らがせてくれるのは事実。シンプルな色と自分の大きな手に馴染む頃合いのサイズ、ざらついた肌触りが気に入って此処何年か愛用している品に礼を述べる代わりに再びくちづけた。

摩天楼。言葉にすれば不思議に魅力を伴う(其処に住まうことをハイ・ソサイアティだと頑強に思い込むある意味狂信者達にとって限定)ものかもしれないけれど実際に其処で生活を営む者としてみればどうということはない。ただの簡単な牢獄。
退屈な雲の上。下界の様も白灰の厚い帳に包まれ見えやしない。尤も見えぬが花、と言うことばもあるけれど。

「可葉」
不意に窓からひらり、と羽が降る。かと思えば舞い降りた影が口を利いた。頭部の飾り羽だけが蒼い純白の鳥。その不思議さを不思議と思えるだけの分別ももう自分にはない、と可葉は小さく嗤う。
「…ジェイディス」
「何さ普段は可葉って呼べって五月蝿い癖にたまに呼んでやればこうだよ月嶋可葉!」
とん、とマグをテーブルの上に音立てて置き、相手の呼び名を単語のみで訂正してやると不機嫌そうに憤慨してみせる。尤も本当の憤慨なんてものとは懸け離れた場所にある言わば戯れの如きそれだけど。
「正直どちらでも構わないけれど。私は私でそれ以上でもそれ以下でもないし名前で左右される程の存在でもないし」
「とか言う癖に結構拘るよねぇ。捻くれものの魔女様。それに薔薇は薔薇って名前だからこそ美しいんじゃあないんだっけ?」
「黙って。それで何の用事なの」
揶揄気味に言葉を連ねる鳥の台詞を断ち切るようにぴしゃりと問うけれどもしかし、可葉には既に解っている。彼が何の為に此処に訪うたか。
わからいでか、と心の中で呟く。アイオーンが伝令役のこの鳥…名は記憶の彼方だが…を遣わす理由はただ一つだから。
「はいはい。脱因果律方程式を解こうとしてる馬鹿者がまた現れたよ。魔女ジェイディス様のお出ましだね」
予想に違わぬ言葉を紡ぐ鳥にただひとつ溜息を漏らせばつかつかと真っ直ぐ歩み壁の金具に固定してあった銀の宝杖を手に取る。
同じく壁に掛けていた顔を半面覆うタイプの白い仮面を身に着ければ身に纏っていた普段着の黒のカーディガンとベージュのパンツがふわりと溶けて純白の衣に変わる。花開くかの如く。皮肉か、と可葉は何時も思う。この衣装を纏う自分は花などではなくむしろ正反の存在だと自ら知っているから。
それでも、背筋を伸ばし宝杖を翳し「場所は何処」と問う自分を辞められないのは何故だろうか。
これも呪いの一つなのですか、存在せぬ何者かに心内で問いながら可葉は唇のみで微笑んで鳥へと向き直った。


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月嶋可葉は「つきしま かよう」と読みます。

脱因果律方程式の元ネタは言わずもがな。
posted by アサコ | 21:23 | 創作文章 | comments(0) | trackbacks(0) |
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